第二百五十夜 コンスタンティン

すべての常識を超越せよ。
 
見てきました、「コンスタンティン」。
キアヌ・リーブスが主演するキリスト教世界観でのオカルト映画。
マトリックスを越えるとさえ言われる超大作を・・・・あんまし期待せずに見てきました。
 
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というのも公開後の評判がいまいちなんです。
 
悪くも無く、良くも無く・・・・。
監督は新人で、なおかつこれまでエアロスミスなどの音楽ビデオクリップなどを手がけてきた、言わば「映像美」を得意とする監督フランシス・ローレンス・・・。
  
そうです。日本でも最近一人そういう方がいましたね・・・・。キャシャーンのあの方です。まああれはあれで個人的には結構燃えたのですけど。
 
前評判ではイマイチ分かりずらい、とか、キリスト教が分からないと付いて行けない、といった感想が目に付いたのですが、私は割りとすんなり入っていけました。マトリックスほどには複線や謎は深くないし、一応複線の全てがこの一作で全部解けるようにはなっています。でもこれから鑑賞しようという方、見たけどよく分からんと迷ってる方のために、今回は映画コンスタンティンの批評そのものではなく、元ネタになっているキリスト世界観・慣習や登場するアイテムの調査をしてみたいと思います。
 
後半ネタバレが書くつもりなので未鑑賞の方はご注意を。
 
運命の槍
映画の冒頭で説明の入るこの運命の槍、キリスト教世界では有名なアイテムのひとつです。
そう、「ロンギヌスの槍」と言えば耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
日本でもマンガや映画の小物によく使われるのでその由来も知っているかたも多いと思います。ちなみに僕も「運命の槍」という言葉が出てきた時点で、ああロンギヌスの槍か、と気づきました。
http://x51.org/x/04/11/2810.php
ここめっちゃ詳しいです。
ゴルゴタの丘で処刑されたイエス。その脇腹を付いたローマの兵士(百人隊長だったか?)ロンギヌスの持っていた槍(正確にはその穂先)のことを指します。
イエスの血を吸っていたことから聖なるアイテムの仲間入りをしたこの槍は様々な人の手にわたり今現在行方不明だそうです。
http://www.geocities.co.jp/Bookend/1232/page127.html
有名どころで何本か残っているとされているものもあるのですが・・・まあこの手の聖なるアイテムは後の世界で模造されたものとみた方がいいでしょう。
 
ちなみにこのロンギヌスの槍の所有者の中にはローマ皇帝コンスタンティヌスも混じっています。そう、主人公ジョン・コンスタンティンの下敷きになったと思われる人物です。
 
コンスタンティン
おそらく下敷きにしたのがローマ皇帝コンスタンティヌス帝。高校の世界史に登場する有名人なので名前くらいは聞いたことはあると思います。
http://www.tcat.ne.jp/~eden/Hst/dic/catholic.html
ミラノ勅令でキリスト教を公認し、ニケーア宗教会議で教義の統一をしたとされています。
 
「三位一体」
映画の中で「父と子と精霊の名のもとに・・・」という文句が再三登場します。上記の二ケーア宗教会議でコンスタンティヌス帝が教義と定めたもので、「父なる神、子なるイエス、聖霊の三者は等質で不可分であるとする説」だそうです。
みっつあわさって1つの神であるというか、分けることはできないものであるというか・・・。まあ、キリスト世界の決まりごとみたいなもんだとおそらく仏教徒であっる皆さんは思っておけばいいでしょう。映画そのものにはあまり関係しませんし。
 
「神の子」
この映画中ではイエスを指します(おそらく・・・間違いないと思うけど)。ロンギヌスの槍もそうですが、陳腐になるのを避けたのか、それともキリスト教徒には分かりきっている部分を敢えて固有名詞で表記する必要はないと思っているのか、こういう表現が多いですね。日本公開も視野に入れて製作してるんだからもう少し分かりやすい表現にしてもいいのになあ、と思わずにはいられません。
ちなみにキリスト教は一神教で、神、と言えば主なるただ一人の神を指します。そしてその名は口にしてはいけないので基本的には「神」とだけ表現します。作中かなり後半でガブリエルがなじっている(人間を甘やかしている、という意味の批判をしている)のもこの、唯一神です。正確には名が無いのではなくてあまりに長く発音されなかったので読み方が伝わっていないというのが正しいのですが。(第二百二十八夜 エホバの商人参照)
 
「ガブリエル」
天国には神に仕える天使が沢山います。その数ん十億ともいわれていますが(作りすぎ!)、その頂点に君臨する四大天使の一人です。
http://www.linkclub.or.jp/~argrath/aka.html
ちなみに四大天使とは、ミカエル、ガブリエル、ウリエル、ラファエルの、四人(?)です。映画中では天使や悪魔は人間世界には直接現れることはできない、という設定になっていて、あくまで人間を介してしか現れることができない、ということになっており、作中に登場するガブリエルもあくまで名前だけ同じ・・・という冒頭設定になっていますが、実はそれが裏切られている・・・・というがこの映画の二段構えの設定ではないかと思っています。人間界に登場した天使や悪魔はコンスタンティンみたいな退魔使が退治していい、ということではなかろうか、とよんでいたのですが。
ちなみにガブリエルは女性な容姿や中性的な容姿で表現されることが多く、この映画でも配役はその辺を意図しているのがすぐ分かります。かなりのはまり役ではないでしょうか?
「ああ、この人がガブリエル、納得!」
と私は感じました。まあルシフェル役も結構はまり役ではありましたが。
 
ルシフェル
サタンと言った方が馴染みがあるかもしれませんが、これも日本のマンガや映画でさんざんぱら登場するのでご存知の方も多いですよね。
もとは天使だったルシフェルはその天使との戦争によって天国を追われ、地獄に落ちたとされています。
http://scjb.raindrop.jp/sinwa14.html
サタンとは元は別物だったはずですが、この映画の中では同一にされています。(←字幕見ると一発で分かります)ちなみにこの映画のラスボス役のマモンはルシフェルの部下のはずなのですが、映画では子供になっていてコンスタンティンルシフェルの会話では「家族はどうだ?」「忙しいよ」みたいな会話が交わされます。
 
「ハーフ・ブリード」
http://cinema.kansai.com/new/index_050414.html
こいつの解釈が一番難しい、逆にいえばこれされ何とか自分の中で消化すればこの映画は半分方理解したも同然です。天使・悪魔が人間界に実体として現れることができない、とされているこの「コンスタンティン」の世界においてなんとかその影響を及ぼそうと実体をとった形がハーフ・ブリードだと思えば、まあいいのではないでしょうか? ただ、その名の天使(たとえばガブリエル)や悪魔そのものではなく、その影響下にある人間界の使者みたいなもん。失敗すれば死ぬのではなく、それぞれの所属する天国や地獄に逆戻りーみたいな。
 
「自殺の罪」
こいつはキリスト教ではなく、カトリックの教えのひとつなのですが、コンスタンティンでは重要なキーになっています。すなわち、主人公コンスタンティンがなぜ地獄に落ちる運命を背負わされていて、それを避けるために必死こいてハーフ・ブリードと戦っているのか、という動機付けに使われているのです。
http://easyweb.easynet.co.uk/~ebihara/mb/jp4-0030.htm
「神の十戒」とされているアレですが、モーゼの十戒と言ったほうが早いかもしれませんね。作中コンスタンティンは主なる神のことを結構あしざまに言ってたような気がしますが、本気で天国に行きたいならそっちを悔い改めた方が早いような・・・と感じずにはいられませんでした。まあそんなキャラクターだと面白みに掛けるのでストーリー的にはいいんでしょうけど。
 
・・・
さて、劇中で登場するキーワードで主だったとこはこの辺でいいでしょう。
http://constantine.warnerbros.jp/japansite/index.html
ここにもう少しありますが、この映画を見る上で知っておいた方が理解が早いと思われるものはこのくらいですね。キリスト教が分からないと理解できない映画、と評されているところもありましたが、このくらいの基本知識があれば十分に理解できる、と思います。
 
こっからはネタバレありの内容解説です。未鑑賞の方はご遠慮ください。
 
 
 
 
 
 
 

「ガブリエルはなんなの?」
作品の設定ではハーフ・ブリード(完全な天使でも完全な悪魔でもない、天国と地獄からの使者。彼らを通じて、神も悪魔も間接的に人類への影響を及ぼすことを許されている。公式サイトの設定)とされています。正確には「天使」と「悪魔」であり、それを許しているのが「主なる神」と「ルシフェル(サタン)」ではないか、と思うのですが。
そういう設定なので、本来ガブリエルとコンスタンティンに呼ばれた女性(?)は天使そのものではないはずなのですが、いつの間にかその約束事を破って直接人間界に影響を及ぼそうとしている、というのが裏設定のようです。天使の羽がばっさばっさと現れるのは天使側のハーフブリードであることを示していたのだと思われます。
運命の槍を使ってアモンを人間界に登場させ、「神に甘やかされた人間に嫉妬した」ガブリエルは神の決めたその決まりごとを破って人間界を一度地獄に引き渡そうとしています。
この辺のガブリエル裏切りの動機付けは長い台詞によって語られるのですが、まあうまくまとまっていて、好感が持てます。話の筋も壊してませんし。
でも、結局はその行為が神にばれたのか、ルシフェルとの対決のときには神に見放され、羽は無残にもぎ取られてしまいます。おそらく「神によって人間界に落とされた」というオチだと思われます。
 
コンスタンティンの部屋に大量の大きな水のボトルが・・・」
聖水らしいです。途中までなんなのか分からず結構気になってたんですが。
 
コンスタンティンが手首を切ったのは・・・」
自分が死ぬときには必ず迎えに来るという約束をしていたルシフェルを呼ぶためだと思われます。つまりあの行為は「自殺」なわけですね。ただ一回目の自殺と違うのは「自己犠牲」という行為としての自殺であり、イエスに通じる行為ということで、神から「チャラ!」にしてもらえたのだと思います。それを「ずっりー」と感じたルシフェルは天国に召される直前のコンスタンティンを捕まえてあろうことか「肺がん」の元を直してしまします。
 
コンスタンティンが最後に咥えたのは・・・・」
前編通じてタバコ辞めますか? それとも人生辞めますか? というアンチタバコ運動めいっぱいの作品ですが、肺がんが治ったあとのコンスタンティンはラストの決めのシーンでタバコを取り出すのかと思いきや・・・・どうもガムだった模様です。
 
「エンドロールの後のシーンって・・・」
エンドロールの後にワンシーン、おまけが入ってます。事前におまけがあることは知ってたので(知らなくてもたいていの映画はエンドマークが出るまで見るタイプなのですが)、一応確認しました。実はあのシーン、映画の中盤に複線があります。
ヘネシー神父が急性アルコール中毒でやられたとき(タバコだけじゃなく、アルコールまでやめましょー運動が混じってます。ちなみにヘネシー神父はV.S.O.P.が好みらしい。なんちゅう安直な設定じゃ!)コンスタンティンの助手チャズが彼を抱え上げ、バルサザールをにらみます。そのとき彼の背には、な、なんと天使の羽が・・・。
つまり、チャズもまたハーフ・ブリードではなかったのか、というのが私の解釈です。ただし、その力を人間界で使うことは神によって禁止されているので、禁忌を犯したチャズは天国に強制送還されちゃうのです。そのことをコンスタンティンは感ずいていて、チャズには実地を任せなかったのではないのかなあ、と深読みしてしまいました。
なので最後のシーンは私には割りと予想しやすい展開でした。あ、やっぱりみたいな。これはあくまで私見ですが、チャズ=ラファエル ではないかな? と考えてます。公式サイトの設定では「コンスタンティンを勝手に師と慕っている、忠実なる助手、ドライバー。コンスタンティンの見る世界に魅了され、宗教と超常現象に関する豊富な知識で・・・」とされていますが、この豊富な知識で、という部分がラファエルに通じるような気がするのです。また、ラファエルはトビト書の中で「アザリアという若者」で登場し、「絵画ではラファエルは杖と水を持った旅人の姿で描かれることが多い。」とのことで映画の中のチャズと共通項も多いんです。(ラストバトルでは聖水を大量に作る役周り)ラファエルとチャズではあまり音に共通項はないですが、チャズとアザリアならなんとなく響きも似てますしね。
http://urawa.cool.ne.jp/seraph/Raphael.htm
 
 
「双子の姉妹の妹はなぜ自殺?」
話の展開上、コンスタンティンとドットソンを事件に巻き込む必要があったのでしょうけど・・・。まあ、アモンによって強制的に自殺させられることによって「自殺の罪」で地獄に引きづりこまれた、というところではないでしょうか。霊感の強い人間ということでアモンが人間界に登場するための触媒に利用されたのだと思われます。その割にはすぐにドットソンも狙われたり、ルシフェルにあっさりと天国にトレードされたりしてますが。
 
 
 
 
なんだか、続きものが作られるとか作られないとかいう話もあがっている「コンスタンティン」ですが、結構ストーリーはまとまっていて、この手の「天使と悪魔のオカルト戦争」話の中では分かりやすくてすっきりしていると感じます。その分次回作をつくるには裏設定が少なすぎて苦しいんじゃないかなあーとは思いますね。マトリックスの第一弾を見たときほどの感動はなかったですが、地獄の表現の仕方とか、随所に出てくる映像の構図とかはなかなか良かったですね。あまり映像が暗すぎない(オカルトものでは黒や闇を多様しておどろおどろする映画が多いが)のも好感をもてました。
 
 
でも一番、感じたのは・・・・
 
  
煙草やめよっかなー。
ですかね。