第二百九十八夜 双葉町には四つ葉のクローバーが多い、といったデマはどうして広まるのか


「庭の一角に四つ葉のクローバーの群生地があったよ!」と教えられた。
引っかかったのは、その続きで「双葉町にも四つ葉のクローバーの群生地があるってネットにのってたよ。怖いね〜」とのコメント。聞いた瞬間にオチが読めたのだが、その場では触れずに我が家の"群生地"なる場所を確認した。
教えてくれたその場所は、日当たりが悪く、子供たちの通り道になっている場所だった。

四つ葉のクローバーができる理由

クローバーが四つ葉になる理由には大きく2つの要因がある(と現在はされている)
さっくりまとまっていてかつ信頼できるサイトから引用。
レファレンス協同データベース

1 原因
所蔵図書・雑誌には記述が見あたらなかったが、同様の質問に専門家が答えた下記2件の情報を紹介する。2件とも植物発生遺伝学研究者の塚谷裕一氏が回答。
1)「ののちゃんのふしぎ玉手箱」(『朝日新聞 2005年3月5日』夕刊6面)に「四つ葉のクローバーはなぜ四つ葉なの?」という質問が掲載されており「原基という葉の赤ちゃんや遺伝子に異変が起きている」と説明がある。
2)日本植物生理学会のウェブサイト( http://www.jspp.org/  2007/06/19最終確認) 内の「みんなのひろば」に質問コーナーがあり、「四葉のクローバーと突然変異について」という質問が掲載されている。
四つ葉のクローバーの発生理由として、以下2通りの説明があり。葉の原基(げんき)は「非常にデリケート」で、「その部分が踏まれたりして傷ついたり、あるいは逆に栄養が多すぎたりすると」発生する。また、園芸店などで売られている高い確率で四つ葉になる品種は「突然変異のため、3つ1セットにする仕組みそのものが変化してしまったもの」と記述あり。

結果として、四つ葉のクローバーは、
1)突然変異を起こした群落に集中的に発生し易い
2)日当たりが悪かったり、踏みつけられる場所に集中的に発生し易い
ということが分かる。
ちなみに三つ葉の、四つ葉の、と言っているが実はアレは3つで一枚の葉らしい。
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よつばみたいに結んであるだけで一人分の髪の毛、というのと同じらしい。

よつばと! 12 (電撃コミックス)

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閑話休題
で、発生している事象が「原発の近くだと四つ葉のクローバーが沢山できるらしい」という、どこぞの釣り師が作ったと思われるまことしやかな眉唾話が拡散している状態。別に私は危険厨でも安全厨でもないのだが(強いていえばソース厨か)初見で怪しさを感じてしまった。大体双葉町って埼玉スーパーアリーナに町議ごと避難してたというニュースが出てたくらいなのに一体誰がそれを見たんだよ。研究調査として入ったのならそれなりの人物名が出てこないとおかしいだろう、と。

まあネットで探してもこれの元ネタを見つけるのなんか無理だよなあ、と思ってダメ元で検索したら、存外にあっさり見つかった。(こういうのは大抵追いかけても出自があやふやなことが殆どなのでかなりのレアケースだと思う)


「まるで絨毯のよう…」 幸福の四つ葉咲き乱れ 福島・双葉町(虚構新聞 2012.04.20)

原発双葉町⇒四つ葉のクローバー という連想なんだろうが、正直この記事に関して言えば「虚構新聞にしては品のないネタだな」と不快感の方が先に立った。まあ虚構新聞だからこそ「デマの元」が証拠保全されていて、その点に関してはいいんだろうが。
1年ほどめぐりめぐって断片的な口伝え情報だけが独り歩きしている状況を考えるとどうなんだろう、と思わずにはいられない。
(断っておくが、個人的には虚構新聞のスタンスは嫌いではない。)

状況証拠しかないので断定はできないが、情報が(悪い方向に)断片的に独り歩きしている要因の一つはツイッターの存在だと睨んでいる。
虚構新聞のタイトルでggrksを行うとタイトル引用や本分のセンセーショナルな部分だけを抜粋したツイートが複数引っかかってくる。
元記事から一年たった今でも、だ。

ツイッターの恐ろしいところは「誰も悪者はいないのに一次情報が捻じ曲げられる」「本来争わなくていいのに事象の枝葉の部分で論争(と言えば聞こえがいいがただの罵り合い)が発生するところだ。

alpinixがツイッターをやらない最大の理由は「140文字のつぶやきでは自分発信の主張の正確性を担保できない」から。決してalpinixというアカウントが北欧の若造に先行取得されていたからではない、断じて!
*1

個人攻撃になるので一々例示しないが、ツイート文を見ただけでは「それが虚構新聞という、いつもいつも嘘ばっかりついてる狼中年のサイト」だということが分からないツイートが確かに存在する。
*2

それを見た人が「双葉町に四つ葉が多い」を事実として一度受け取ってしまう可能性は多いにある。都市伝説にありがちなパターンだ。
訂正記事を出せばいいんじゃないか、いやその記事を読まない人もいるんじゃないか、という水かけ論もあるのだけど、「Web上に記事が載ることの危険性」として大きく2つ根拠を提示したい。

■アンカー効果/一次効果
まずは一つ目、根本的に人の特性として、少し前の記事だがこういうものがある。
研究結果:人はオンラインで即座に訂正されても虚偽情報を信じ続ける

一旦情報として提示された内容は人の頭の中で覆されるためにはより多くのエネルギーが必要なのだ。
所謂アンカー効果(アンカリング)というやつ。情報操作としての見地からは一次効果と呼ぶらしい。
どういうことかというと、見積もり提示にちょっと大きめの金額をふっかけておいて、後から少し安い金額を提示することで顧客は割安感を感じるといった現象・・・えっ僕はやりませんよ?

*1:じゃあブクマの100文字はいいのかよ、という突っ込みには、アレは一次情報に対する二次コメントだから(100文字でも足りることが多い)、と考えている。逆に100文字で突っ込みきれない反論なら記事に不快感を感じていても敢えてブクマしないことも多いし、単に「俺もそう思う」的なブクマコメントは全く意味がない(今のブクマではスパムですらある)のでこれも敢えてブクマしない。

*2:虚構のUK氏が妙齢の美少女である可能性は否定できないが、狼中年という表現は不適切かもしれない。虚構だけに。「幸福の」という枕言葉を使う年代が妙齢とは思えないけどね。