第二百九十七夜 あるぴにっくすの人力検索着想ノート 其の二

人力検索の設問のコツは「隙を作ること」ではないかなあと思ったりしています。クイズとして成立しないのは不味いですが、100の回答しか得られない質問より、質問者が期待した100の回答を上回る120の回答がつく質問が作れればいいなあと考えているからです。いわいる化ける質問ですね。

http://q.hatena.ne.jp/1290007944#a1047492
 
どうやって「とりあえず入れとけば面白いことが起きそう」な質問を作るのか?
 
質問者にとって、永遠の課題かもしれません。(僕だけ?)
 
でもこれって人力検索に限らず、突き詰めるとクリエーターの求めるものと同じなのかなあ、とは常々考えてはいました。
魅力ある作品って、どんな分野でも似た側面を持つのだということなのかもしれないな、と。
 
それは、僕の中では下記のようなものとしてとらえています。
 
1.土台がシッカリしていること
2.誰もが目を引きやすい魅力ある内容が表面にあらわれていること(キャッチーともいう)
3.スピリチュアルに傾倒していないこと
4.3にも関わらず、一見すると非論理性や非合理性を孕んだ不可思議さを持っていること(本格の要素に近い)
5.内輪受けを狙ったような閉鎖性を排除すること
6.5にも関わらず、リピータの心をくすぐるコンテンツの連続性があること
7.冗長過ぎないこと
8.回答者の自由度を損なわないこと(回答手段や方法を限定し過ぎて、所謂"ガチガチ"の状態にしないこと)
 
といったことがあると思います。(他にもあるかもしれないですが、ここでは思いつくままに記述しております)
参加型コンテンツということで若干当てはまらないところもありますが、有名ブログになるための要素といったものに近いと思います。
 

1.土台がシッカリしていること
質問として、ブレがあったり、範囲が膨大すぎると収集がつかず、結局回答者の興味を失うことになります。一度興味を失われた質問者はその後、敬遠される場合があるので「ブレた」と感じた場合は即打ち切った方が無難かもしれません。
 
例えば、哲学的な質問をしている場合に、別な視点の宗教的な回答が混ざってくることがよくありますが、丁重にそれは求めて言うものと違う、と宣言しないと、本来集めるはずだった回答者を排除してしまうことになります。
 
2.誰もが目を引きやすい魅力ある内容が表面にあらわれていること(キャッチーともいう)
リニューアル前には画像付き検索が有効な手段でした。質問のミスリードも含めて最も効果的に画像を活用できたのは
http://q.hatena.ne.jp/1304665602
これでしょうか?
 
また、質問のトップセグメントの文言には細心の注意が必要な場合があります。括弧【】囲みを使う場合は、それが意味する文言が「人によって捉え方が異なる」「説明口調は却って逆効果」「煽り過ぎなキャッチも逆効果」ということを踏まえておく必要があると思います。炎上マーケを狙うならそれでもいいのでしょうが、前回に書いたように真の狙いは「ポジティブな継続ウォッチャー」の獲得なので、反感を買うような行いは慎むべきでしょう。
 
(こうやって書いていて気付いたのですが、質問のコツというか人力検索でうまく質問を回すには「功利主義的」見地から進めていくのがよいのかもしれません。単に僕が功利主義に舵を切っているだけかもしれないですが)
 
3.スピリチュアルに傾倒していないこと
これはあるぴにっくすの主義のようなものもあるのですが、スピリチュアルに傾倒してしまうと、どうも定常的に参加している人力検索のユーザー層と合わないんですね。理系若しくは、現実主義的なユーザーがコアを占めている(今は違う)はてなでは、スピリチュアルな話題は敬遠されがちです。
  

4.3にも関わらず、一見すると非論理性や非合理性を孕んだ不可思議さを持っていること(本格の要素に近い)
これは手法の問題です。Q&Aというよりも物語とか商売の手法に近いです。
心理学的にも、初見で結論が予想できるものよりも、一旦不審や不可解な印象を持ったのちに、その謎が解けるパターンの方が、ユーザーの心を掴みやすいようです。そのため、一見だけでは謎だけど実は裏があるんじゃないか? と思わせられることができれば、この段はかなり成功だろうと思います。でもそれは継続性とも連動しているので一回の質問で構築するのは難しいのかもしれません。
 
やはり
http://q.hatena.ne.jp/1304665602
これが例としていいでしょう。
 
考えてみるとこの質問はミスリードの手法を注ぎ込みまくった(個人的には)質問としての傑作です。

 

5.内輪受けを狙ったような閉鎖性を排除すること
継続ウォッチャーを囲い込むことが目的なのですが、都度増える可能性のある、新規ユーザーを遠ざけてはいけません。その意味で、キャラクターなどの固有名詞の使いまわしや、身内にしか分からない隠語での作問は演出などの効果を狙ったものを除けば避けるべきです。
 
そういう意味でlionfan氏のB美D菜は、格好のキャラクターでした。著作権の心配が無い上に、キャラとして安定していて、なおかつアルファベットが文字に含まれることで人格の普遍化が図れました。特定の商品やメディアのキャラでないことで閉鎖性にも陥っていません。全くもって合理的なキャラの名付けだと思います。そこにもいつも感心していました。
 
 

6.5にも関わらず、リピータの心をくすぐるコンテンツの連続性があること
3〜4回に一回の周期でのリピートに近い質問の投入、回答者の前回履歴や他質問での回答への言及など、参加しさえしてくれれば、ここはどうにでもなります。クスグリの手練手管はやってくうちに磨けるでしょう。 相手を否定しないこと、個人情報に突っ込まないこと、などの配慮は必要でしょうが。
 
7.冗長過ぎないこと 
質問文に500字制限があるので大抵は大丈夫でしょうが、コメント欄を流用したりダイアリに誘導したりする場合には注意が必要です。普通のユーザーなら質問文の500字に収まっていない質問はそれだけで、見向きもしないと想定すべきです。継続ユーザーなら我慢して見てくれるかもしれませんが、質問文に500字、コメント欄にもさらに500字とか書いてあったら、回答者はうんざりして読んでもくれないことの方が多いでしょう。よほど巧い文章か暇な回答者なら別でしょうが。 
ちなみに私がいつも目標にする質問文はこれです。
博士がその数式を愛した理由
http://q.hatena.ne.jp/1105776057
ここまでうまくまとめられた試しはないのですが。
 

8.回答者の自由度を損なわないこと(回答手段や方法を限定し過ぎて、所謂"ガチガチ"の状態にしないこと)
ということで核心部です。
冒頭で述べた「隙を作ること」になります。
これは度が過ぎるとザルだの、穴などと言われかねないので匙加減が難しいのですが、回答者というのは質問者の手の平の上で遊ばれるのは一部を除いて好まないだろうと僕は思っています。実際僕もそうですし。
つまり予定調和は面白くない、ということなんです。
質問を見た瞬間に回答者が「こういう回答とこういう回答がついて、それでこれがBA(いるか)になって質問者からこういう講釈が入って終わるんだろうな」と想像されてしまうような作りでは興味を持ってもらえないのです。
 
その企みが最もうまくいったのが
http://q.hatena.ne.jp/1295505522
「「アンパンチ」と「ライダーパンチ」はどっちが強力なのですか?」
でしょう。(企まないことを企む、というかなり難しいことなので、分かっていてもそう巧くはいきません)
 
(勿論、すばらしい回答者に恵まれたことがあの質問が成立した最大の理由であることは分かっていますが、あの阿吽の呼吸はあの質問一回でできたわけではありません、いるかをつけたmeeflaさん、sylphid666 さんとはそれ以前の質問で何度かかかわりを持っていて、あの質問に到るまでの伏線はあったからだと思っています)
 
でも法則らしきものがあることは随分前から勘付いてはいました。このアンパンチVSライダーパンチはブクマを多く集めて、ホッテントリ入りまで成長した、親としては出世頭の息子なのですが、以前にも似た状況まで行ってくれた質問があったからです。
多分最近のユーザーは知らない(覚えてない)と思うので紹介しておきます
http://q.hatena.ne.jp/1257478881
妻がどこからか「0歳児を動物園につれていくと免疫がついていいらしい、と有名な脳科学者が言ってた」との情報を得て、動物園に行くことにしました。
 
「化けるには質問は隙がある」ということに気付かされたのはこの時です。
 
ひと様の質問で、この条件を最近満たしていて「うまいなあ」と感じたのは、akagi_paonさんの
カレーのやつですね。アレはよかったです。SALINGERさんの回答とのセットが絶妙でした。 

それにしても面白い質問を作るのって難しいですねえ。
 
さて、次は・・・・質問の進行方法についてでも書きますかね。
誰も読んでないと思いつつリクエストあれば何かコメントしてくださいな。