第二百六十六夜 三谷幸喜って名前が「シアワセ」に「ヨロコブ」って

三谷幸喜って名前が「シアワセ」に「ヨロコブ」って書くのに笑ってるとこ観たこと無いなあ

↑長いタイトルつけたら表示しきれなかった・・・ホントのタイトルです。


第二百六十四夜で「映画を見るなら劇場で」と言ったにもかかわらず劇場に足を運ぶのはこのとき以来ですねー。約半年かー。
 
さらに言えば公開日に映画を見に行くなんてインディペンデンスデイの先行ロードショー以来だからなあ。
 
というわけで行ってきました「The有頂天ホテル
年始に古畑任三郎Finalを三夜連続でやって20%強の視聴率をとる、いまや押しも押されぬ日本を代表する脚本家、三谷幸喜の映画です。
 
「Hotel Avanti」で大晦日に起こる奇妙奇天烈な偶然と笑える出来事を織り交ぜた、一見気楽に見られる映画です。
 
復習のために公式サイトを覗いてみました(このときは既に映画鑑賞後)。
http://www.uchoten.com/
公開初日で混雑しているのか、はたまたコンテンツが重いのか読み込みに結構時間がかかりますが、よく出来てます。
 
その中に「About Hotel Avanti」というコンテンツがあります。

戦後、日本が復興への階段を上り始めた1951年
HOTEL AVANTIは誕生しました。
イタリア語で「どうぞ/進め」の意味を持つこのホテルは、
「世界に通ずる“おもてなし”のこころと優雅な空間との贅沢な出会い」をモットーに、
時代の少し先を行くホテルとして高い信頼を築いてきました。
ヨーロピアンクラシックな佇まい、最高級の北欧家具で統一された客室は、
当時、大きな話題を呼びました。
1995年、別館を取り壊し、新しいロイヤルホテルの粋を追求した現在の新館が完成。
7つのバンケットホール
室内プールを併設したヘルスクラブ
高いロイヤリティーを誇るスペシャルフロア
大都会を見下ろすチャペル
そして、
ハリウッド映画「グランド・ホテル」の豪華キャストの名を冠した
4つのグランド・スイートルーム。
2000年にはイギリスのROYAL誌が発表する「The Best Hotel of The World」に選ばれ、
ヨーロッパの有名ホテルに肩を並べる知名度を獲得し、
名実共に「世界のホテル」としての高いステータスを誇っています。

創立:1951年(昭和26年)3月12日
総客室数:354室/総従業員数:155人

ほんとに映画内のホテルのモデルがあるんでしょうか?
ちょっとだけ調べてみました。
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結論から言うともちろん演出であって映画内の「Hotel Avanti」は存在しません。モデルは映画「グランド・ホテル」であり、撮影場所であるJalシティ羽田なのでしょう。
 
まっさきにそれっぽくひっかかってきたのが、
キプロスにあるAvanti Hotel でした。
http://www.eurobookings.com/hotel/17012/avanti-hotel?s=gg-hotels

http://www.hankyu-hotel.com/cgi-bin/cms/rest_plan.cgi?hid=18hhinternational&seq_no=678
の一番下にも東宝のコメントの下に、

【ご注意】
本企画に登場する「ホテルアバンティ」は、映画内に登場する架空のホテルであり実在するホテルではありません。また、提供するお料理は、ホテルアバンティをイメージして創作したホテル阪急インターナショナルのオリジナル商品です。

とはっきり書かれてますしね。まあほんとにベースになるHotel Avantiが存在するなら公式サイトのリンク集に載っていないはずがないですしね。
じゃあ、“The Best Hotel of the World”なんていう賞も三谷幸喜の作った架空の賞なのかと思ったら・・・

http://www.gocuba.ca/en/news.asp?022

The Hotel Nacional de Cuba, declared Patrimony of the Humanity by UNESCO and considered one of the most classical and emblematic hotels of the Cuban hotel industry, has been deserved the award “The Best Hotel of the World” by the participants in the IV Survey promoted by elmundoviajes.com, the digital version of the Spanish newspaper El Mundo.

exciteの翻訳で直訳しますと

HumanityのPatrimonyであるとユネスコによって宣言されて、キューバのホテル産業の最も古典的で象徴的なホテルの1つであると考えられたホテルNacionalデクーバはelmundoviajes.com(スペインの新聞エルムンドのデジタルバージョン)によって促進された賞IVの関係者による「世界の最も良いホテル」価値があるSurveyです。

とのことで偶然の一致だとは思いますが、まあ存在しないわけではない賞のようです。
他の受賞ホテルが見つからないのでどの程度の賞なのかは不明ですが・・・。
 
さて映画本編の感想というかなんというか、なんですが、
見終わった第一感想としては・・・
「超巨大な回り舞台セットを使った演劇を見たような」感じでした。限られた空間(HotelAvnati)を舞台にして、人数を掛けた大量のドタバタ劇。前半で「こんなに広げて大丈夫なの? ついて来れない観客が続出しそう」という不安を感じさせるくらいの複線の張り巡らし。作品内の経過時間は大晦日の22時から新年までの約2時間。
途中で「もう11時」という台詞(誰の台詞だったか忘れてしまった)によってさらに緊張を持たせる展開のスリリングさ。
実際、2時間半というやや長めの尺の映画ということを忘れて最後まで飽きさせない展開でした。一つ一つはなんでもない(ということもないかもしれないが)エピソードを連ねて、絡めて(ほんとによく絡まってた。途中であっ!と気づかされるところが何箇所もあった)束ねて、ほどいて、よく揉んでそれからさっと風呂敷を引いたラスト。
映画というよりかはよく出来た芝居を見に行ったような感触でしたが、それでも劇場で見るに越したことはないでしょう。
 
さてさて、ここからはネタバレ含むでいくので未鑑賞のかたはご遠慮を・・・。
 
 
 
  

よくも悪くも細かいエピソードを繋いで笑わせてくれる三谷作品はさすが、と思いますが、この映画に関わらず、三谷作品には映画でよくあるところの「奇跡」はおきません。
持っていると幸運をもたらすという人形がめぐりめぐって持ち主のところに戻ったり、首にされた女歌手が、仲間の計らいで最後に自分の本当に好きな歌を人前で歌うことを許してはくれますが、二人ともそれでどうなる、ということにはなりません。演歌歌手の大御所に認められたり、桜チェリーが好きな歌で食っていけるようになるわけでもなく、政治家の元愛人であったハナはやっぱり元愛人のままで終わりますし、主人公の新堂も元奥さんと元鞘に戻るでもなく・・・・。
それでいて「まあそれでいいじゃないか」と思わせる現代的なつくりで観る者を納得させてくれます。
非現実的な高揚感を廃して、日常の平凡なところで勝負する、そういう作品感は映画としての面白さをすべて満たしているとは言いがたいが、それでも「こういうのもアリだな」と感じさせてくれました。
  
それにしても篠原涼子の娼婦役はハマリです。以前爆笑問題の司会する番組にゲストで出たときに「役者の人と直に会ってそのハマリ役を考える」と言っていた三谷幸喜でしたが(そのときは爆笑問題の田中を「空港職員の無愛想な入管審査役」(確かこんな役だったと思う)と表し、阿川佐和子を「テキサス(かどっかだったと思う)の娼館の女主人」といってました。それによると石井正則はやっぱり探偵役なんですね。古畑でも同じような役どころでしたし。松たかこのシングルマザー&代議士の元愛人もなかなか面白かったですが、こうしてみると三谷幸喜は愛人願望でもあるんでしょうか? やたらそういう役が多かった気がします。
 

エンドテロップまで見たところで三谷幸喜のところが・・・「脚本と監督」となってました。
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いやそうなんだけどさ。
「と」ってなんですか? 「と」って。
公式サイトでも気になってどういう表記になってるか確認しましたが・・・
やっぱり「脚本と監督」です。
 
 
二つも仕事したんだよーというアピールなのか、それとも今回は映画本編には役者としては登場しなかったよ、という念押しなのか、映画を見た後に私が一番引っかかっていて、もやもやしているところです。
 
 
 
 
 
 
 
 

追記:映画が終わって劇場のライトが点灯したときに愕然としました。入ったのはほんとにギリギリ、予告編をやっているところだったので客の入り数は分からず、それに結構いい席をネット予約していて周りはぎっちりだったので気づかなかったのだが、明かりがつくとこんでいるのは観やすい席のみ。
前三列なんて誰も座ってないし、左右の端席も空席の方が目立つ・・・。
公開初日の午後一の回、それも都内の劇場で、話題の三谷作品がこの入りでは関係者は嘆くだろうなあ・・・。
みなさん割と観やすい席、残ってますよ!
関係者がこのコメントを読んで凹まないことを祈ってます・・・。まあ今日は天気悪かったし。