第二百二十八夜 エホバの商人

二話続けての宗教系のお話です。どっちかというと学術的なお話なのでご容赦を。

 
さて、前回気になった「新宿や池袋の駅前で街宣活動をしているのはどこの集団なのか?」という疑問を人力検索にかけたところ、
http://www.hatena.ne.jp/1108743514

この寒い季節になるとどこからともなく新宿とか池袋の街頭で「イエス、キリストは・・」という抑揚の無いテープ音声で、”キリストを信じないと天国に行けない”っていうフレーズの脅迫的な街宣活動をしている団体が現れますが、あれって母体はどこなのか知ってる人教えてください。

聖書配布協力会
という回答と、
エホバの証人
という回答が現れました。
 
「エホバ」という読みの問題について、この質問で少し触れたのですが、ではエホバという表記の語源を調べてみましょう。
 
http://www.geocities.com/Athens/Agora/3207/name1_2.htm
今、「エホバ」という表記をしているのはキリスト教でも「エホバの証人」と「モルモン教」系です。ここでは、エホバの証人の人とクリスチャンの方の対話形式でエホバの名について議論がされています。議論の中身は私にはどっちでもいいので、すっ飛ばしますが、ここで「四文字語」または「神聖四文字」なる言葉が出てきます。
 
もともと同じ聖書を起源にするキリスト教やユダヤ教は神は同じです(唯一神なので一人)。その御名はモーゼの十戒の三番目にあるように「神の名をみだりに唱えてはならない」そうで、長い間「主(LORD)」とか「神(god)」とかいう抽象的な呼び方がされてきました。
 
さて、元々はちゃんとした(という表現がいいのかどうか)呼び方があったはずなのですが、そういう理由でキリスト教には正式な神の名前が曖昧なままでした。(一人しか居ないんだから覚えてようよ・・・と仏教な私は思ったりするのですが。)
 
まあ理由はもう一つありまして、そもそも神の名を表記していたヘブライ語に問題があったわけですね。
http://www.sol.cs.ritsumei.ac.jp/~nakamiti/hebrew/pronounce.html
そう、古ヘブライ語には表記上、母音が無いのだそうです。
YHWH
こう書いていたそうです。
・・・・
日本語でいえば吉田戦車の漫画で「む」を鏡像にした文字を出して「新しい文字」としていた覚えがありますが、あれも発音不能でした。
長い間発音されなかったため、聖書に書かれているその部分をどう読んでいいのかわからなくなったそうです。

 
http://www.geocities.jp/sos_from_the_congregations/other2.htm
エホバの証人系のサイトではこのように記されています。

 現代では、ほとんどの人々は「Jehovah(エホバ)」という語を使わなくなりましたが、使いはじめた時代や状況が正確にはよく分からないものの、その語には、聖書の示す父なる神を表す語としての何百年以上もの歴史があることは間違いありません。日本語においても、外来語としての「エホバ」という語は古くから辞書に載せられていたようです。

まあ中世くらいから発生した呼び方、だとうたっています。
 
一方で、
http://www.j-world.com/usr/sakura/bible/sakuin.html#yahweh

「エホバ」という読み方は中世末期のクリスチャンの誤解から生まれたものであり、歴史的にも文法的にも根拠がない。ユダヤ人たちが、聖書写本に母音を書き記すようになったのは中世に入ってからであるが、それがマソラ本と呼ばれる写本であり、現在のユダヤ人の聖書の基礎となっている。そこでは、古代の聖書写本に載っている神の名前を表す「YHWH」を、伝統的にユダヤ人たちが「アドナイ」(「わが主」)と読んでいたことから、「Y」と「H」と「W」と「H」の間に「アドナイ」の母音(e, o, a)を挿入してYEHOWAHと書き記し、これを読むときは「アドナイ」(「わが主」)と読んでいたのである。そういうユダヤ人たちの伝統を知らなかった中世末期のクリスチャン(例えば1518年、当時法王レオ10世の下で告白士をしていたペトルウス・ガラテウス)がYEHOWAHを神の名前であると思いこみ、「エホバ」(Jehovah)とそのまま音訳したことが原因となり、それ以後「エホバ」を神の名前であるとする誤解がキリスト教世界で広まり、現代にいたっているのである。

勝手に間違った母音(アドナイADONAI)を当ててしまった、という落ちですが、かなり有力な説ですね。
 
それが、学術的な研究の結果、当時の発音はこうではなかったか?
ということで今もっとも確率の高い読み方が、「ヤハウェ」(ハは小さいらしい・・・どっちにしても日本語では表記も発音も不可能なことにはかわりが無い)となっているそうです。
 
 
さて、表題では「エホバの商人」と表記しましたが実はワザとです。幼少(小学生低学年だったと思います)のころ、確か日曜日だったかと思うのですが、昼下がりに彼らがいきなり玄関に現れました。
母親と子供連れの二人組です。にこやかな表情でしたが、彼らが「エホバ」と気づいた私の母親はさっさと追い返しました。まあ丁寧にでしたけど。初めてそういう宗教勧誘を見た子供の私は興味津々に親に聞きました。
父「あれがエホバっちゅうのや」
私「何しにくるの?」
父「子供連れてやってきて、聖書とか売りにくるんや、こうたらあかんで」
私「ふ〜ん」
父「エホバのしょうにん(「」にアクセントがついていた!)いうのはそういうのや」
私「わかった」
・・
・・・・
そこそこ大きくなって知識が修正されるまで私の中では、彼らは「エホバの商人」という聖書を売りにやってくる商売人でした・・・。