第五十一夜 著作権と引用


はじめに断っておきますが、タイトルは小難しいですが、中身も小難しいです(笑)。まあ五十回突破記念ということで、このブログにしては珍しく私の個人的本音論調です。我慢強さに自信がおありの方はしばしお付き合いを。

このブログ、引用や外部リンクがやたら多いのですが、今回はそういうお話し。本来ブログというものがリンクやリンク元参照の集合から出来上がっていることも多いので私のところがずば抜けて多い、というわけではないのですが・・・。(駄文が多い分、比率で言えば少ない方だと思います・・・主従関係を維持するためでもあるんですが)
そもそも著作権法が制定されたころには今のようなwwwのシステムは無かったし想定もしていなかったと思うので、現行の著作権法で全てを諮るのは、無理だろうと思います。でも今のところその手の問題の根拠とされているのが著作権法しかないので、まずはそこから調べていきましょう。
著作権法の全文が掲載されているページがありました。
http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html
その中から引用に言及している部分を「引用」しました。(正確に言うと「著作権法」全文を引用しているサイトの該当ページから「第三十ニ条 引用」の項目を引用した、となるのですが・・・)

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

(平十一法二二○・2項一部改正)

結論を言えば、この条文に則る限り、リンクは著作権侵害には当たらない、引用も適切な手法が取られる限り適法である、といのが現在の趨勢です。
適切な手法での引用というのは、
・原文をいじらない(改編しない)
・引用元の銘記
・鍵括弧で引用部分を明示する(ホームページの場合は鍵括弧だけでは見にくいので引用部分がそれとはっきり分かる形の方が望ましい、鍵括弧は元々論文や評論の印刷された文章中での表記方法として想定されたもののため)
・あたかも自説であるかのような表記をしない(自サイトのフレーム枠ないでのリンク表示など)

まあこんなところでしょうか。
ネットの初期の頃は「無断リンク禁止」「引用・転載不可」と明示されたサイトが多数あり、私もそちらに近いスタンスをとっていた頃もあります。
(7〜8年前に作っていた幾つかの自分のサイトを見ると普通に「無断リンク禁止」とか書いてましたね。若かったなあ、と感じます)
2ちゃんねるや幾つものサイトで議論されてきた問題なので検索するとその手のページはわんさと出てきます。
目についたところを挙げますと・・・

社団法人著作権情報センターの見解
http://www.cric.or.jp/qa/multimedia/multi15_qa.html
関西大学法学部教授 栗田隆さんの見解
http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/copyright/article2.html
各種リンクの問題(リンク問題に言及しているサイトへのリンク)
http://www.ii-park.net/~yumika/rink.html
リンク否定派を論破するページ
http://park5.wakwak.com/~tanaka02b/column/faq2.htm

全体の流れとして、リンクに関しては
「wwwという公開されたメディアに掲載しているものに、著作権があるからと言って、転載・引用禁止という論法は成り立たない」
とされています。これの逆説を論じているサイトは見つけきれませんでした。広いネット世界、一つくらいはそういうサイトが存在していると思いますが、主流でないことは明らかなようです。
実は一個あったーと思ったのですが・・・
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/1082/


ただ、ここまではページやページ上に記載された本文の話です。ややこしいのが画像やイラスト、アプリケーションやCGIスクリプトといったものです。こいつに関しては意見が分かれているようです。

例えば、他サイトへのリンクについて全面賛成の方
http://members.jcom.home.ne.jp/jintrick/Personal/about_link.html

ただしこういう意見はまだ主流ではないようで、わざわざこの方のページを掲載したのは大勢は今のところ逆だからです。人力検索はてなでも時々問題になる著作権問題ですが、ホームページへの掲載に限っても、本の表紙の画像を自分のブログに勝手に掲載していいものかどうか、という質問がありました。現在のところ非常にグレーな状態です。はてなはISBNコードを使って表紙画像を呼び出すコマンドを内包していますが、それ以外の転載方法についてはダイアラーの方々は否定的な見解のようです。
参照質問 http://www.hatena.ne.jp/1079873782

物が、市販されている本の装丁なのでそういう結論に至っているのだと思います。装丁は装丁を作った出版社に著作権があるのは自明ですもんね。そもそも装丁家さんに敬意を表する必要もあります。
でも、ちょっとまてよ、と思います。じゃあ例えば自動車の場合、自分が買った自動車の写真を自慢気にアップしている方のサイトを「車のデザインにはメーカーに著作権があるのだから勝手に掲載するのは良くない」という論法は通じるだろうか?
まあ無理でしょう。(ちょっと乱暴ですね。車のような立体物は写真から複製することは事実上不可能ですから。だがしかし、本の装丁を掲載したサイトの、あのちっちゃいプレビューデータから、同じ本の装丁を作るのもまた事実上不可能なのです。解像度の問題なので深くはつっこまないですが・・・。)
さらに、本の装丁は本屋さんで公に陳列され、一目で見えるようになってます。(背表紙しか見えない本棚の本もありますが)もちろん装丁にも著作権は発生するでしょうが、本の価値は装丁ではなく表紙をめくった中身にあります。装丁は本の公開された部分であろうと考えます。車に話を戻すと、車の外観を画像で紹介するのは問題ないでしょうが、「自分が買ったものだから」と、エンジンやトランスミッションを分解してその詳細をアップするのは問題だろうという考えです。本だって表紙はいいでしょうが中身は「手にとってページをめくらないと」確認できませんし、書店でそれが許されるのは本来「中身を確認するため」であって所有者となるには対価を払って購入する必要があります。
話が(自分から)泥沼に入ってきたので、論法の方向を変えますが、
「書評や批評を書くのにその本の表紙を掲載しないと、読んで興味を持った人がその本を書店で探しにくくするだけだろう」
と思うのです。物を売ったり宣伝するのに外観を提示しないのはおかしい、と。
まあ、それが完全複製可能なほど精緻にデータ化されたものであれば問題でしょうが、画面で確認できる程度の小さい画像であれば何をそんなに目くじらたてるのか、と。

多分異論反論いっぱいあると思いますが、現在の趨勢では上の私の論は受け入れられない場合があるので他の人に薦めようとは思いません。むしろ版元を敵に回す行為は止めときなさいよと助言します。ただ、いずれそういう考えは廃れると思うから、良い子はそれまで待ちましょう。

ネット上にアップされた画像やイラストも同様です。そもそもこの手のものにはアプリやCGIなんかも同じテーブルで論じられなければならない問題だと思うのですが、フリーでないそういうものには必ずと言ってよいほど、プロテクトや期限制限が掛けられています。つまり公開しているといっても「見せていい部分」と「見せたくない部分」を明確に区分して見せたくない部分は事実上公開していないからです。じゃあ画像やイラストは? というとそういう手間をかけずに公開されたネット上にリソースをアップしておきながら「勝手に使うな」と言ってるわけです。じゃあ誰でも見える状態でアップするなよと言いたいのですが、どうしてもネットで見せたいらしくイラスト系で転載・引用禁止を標榜しているところはまだ多いようです。自己防衛できないならアップしなきゃいいのに、と思ったりします。
でもその上でも守るべき部分はあります。創作されたイラストや画像にはそもそも著作権は発生するのでそれが公開されているからといって勝手に自分の作品に取り込んだりはできません。参照や引用は可、だということです。

Alpinixは元来、物書きな人なので、イラストや画像よりも文字の方に愛着があったりします。よくイラストレータの方が直リンク、転載禁止としてプレビュー表示しているのを見ると、「文章」とどこが違うの? と思います。根拠はデジタルデータだから容易に複製できてしまう! というものなのでしょうが、文章だって同じです。だから公開ホームページには引用、リンク、転載されても構わない文章しか記述してません。されたくないのは自分のマシンの中だけです。

ブログの便利な機能の一つとしてトラックバックというものがあります。以前はCGIなどを駆使しないと入手できなかった訪問元リンクや参照元リンクが誰でも簡単に分かるようになりました。これはそういう機能が必要とされた背景に、
「リンクは勝手に張られるもの」
という考えが常識になってきたことの現れであろう、と考えてます。
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えっ? 小難しい話を我慢して読んだのに、落ちが無いって? いやここで「無断リンク禁止!」と標榜しているサイトにリンクを張って終わるつもりだったんですが、どうも最近は個人サイトくらいしかそういう書き方をしているサイトが見つかりません。個人攻撃は好きじゃないし、個人のブログサイトをそんな風にあげつらってもしょうがないので出来るだけ大手にしたいところなのですが、大手はこの問題に気づいているところが多く「・・・お願い申し上げます」という弱気な立場が殆どです。


http://www.jvcmusic.co.jp/faq/link.html
とか、
http://www.yamagiwa.co.jp/interior/link/link.html
とかで。

とうわけで、このくらいで・・・。