第二百十四夜 恵方

今年も節分が近くなってきてコンビニあたりで例のチラシが出回り始めました。
 
そう「恵方巻き」の販売広告です。
 
question:1106714149
人力検索でも関連の質問が立っています。ここ数年関東でも紹介されるようになって割りとメジャーになってきた感のある、この風習ですが、さてその由来やいかに・・・。
 
まずは風習そのもののおさらいです。

2月3日の節分の日にその年の恵方に向かって太巻きを一本無言で食べる。
 
これが一般的な(!?)やり方だそうです。
まずは、この方角についての考察があるサイトを探してみました。
http://www.miyata.ne.jp/column/tabacya1/ehou.html
分かりやすい表になっているサイトがあったのでこちらを紹介。
十干十二支の十干の方を元にして方角を決めるのだそうです。(干支についてはhttp://d.hatena.ne.jp/alpinix/20041217で以前に取り上げたことがあるのでそちらを参照)
 
その方角というのは歳徳神がという神様がおわすところであるそうで、神様に向かって食べ物を食べるというなんだか考えてみるとへんな風習ですね。
 
では歳徳神というのがなんの神様なのか調べてみました。
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/yasaka/toshitoku.htm
櫛稲田姫命という別名(というか歳徳神の方が異名jかも)がある神様でようは暦をつかさどる神様だそうです。
http://www.loops.jp/~asukaclub/kami/kami_148.html
日本書紀にも登場する、れっきとした日本古来の神様でもともとは農耕の神様だった模様。
http://www.shinsenen.com/saitoku.html
京都神泉苑、八坂神社(3つ上のリンクは八坂神社のサイトです)などで祭られていますね。(実は関東にも埼玉の氷川神社で祭られているらしいですね)
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ではこの恵方巻きの風習は京都八坂神社からの風習なのでしょうか?
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/yasaka/setubun.html
丁度節分関連の特集ページが解説されていたので見てみたのですが、特に「恵方巻き」に言及している箇所はありません。
 
そろそろ、核心に迫りたくなってきましたので、焦点を絞って検索していくことにしました。
そもそも方角に関する風習なので、日本古来の風習というよりは中国の風水の影響を受けた風習である可能性が高いですね。いわゆる陰陽道というやつです。
 
http://aya.kill.jp/8syoushin.html
ありました。

八将神は「はっしょうしん」と読み、陰陽道に於いては「方位の吉凶 」を司る八柱の神様の事です。
この八将神を産んだとされるのは「歳徳神」という神様であり、広く「年神」と呼ばれ親しまれています。

http://www5b.biglobe.ne.jp/~whiteday/abeseimei/gendai.htm

☆恵方(えほう)
関西地方を中心に、節分には恵方を向いて太巻きを食べると言う風習がある。
「恵方」というのは陰陽道の思想で、陰陽道の考え方では方角には様々な意味合いが込められている。
その年の干支に基づいて方角にも吉凶が生まれる。
恵方とはその年の歳徳神のいる方向、良いと定められた方向のこと。

とのことです。
やはり「恵方」という考え方そのものは陰陽道から起こっているようです。ただ「としがみさま」という呼び方はなんとなく日本古来っぽいので、合体神なのかな? と思われます。
 
http://www.nikkoku.net/ezine/kotoba/ktb016.html
それを裏付ける記載がみつかりました。

白川静さんによれば「年」は穀霊に扮して舞う男女の姿を写した字で、「稔(みのり)」の意味だという。豊穣を祈る農耕儀礼だったのである。したがって年神とは農耕において五穀を司る作神としての性格を強く持っていた。

しかし一方、陰陽道における年神はそれとは性格を異にし、年ごとに人間界に来訪する神霊を歳徳神といった。その名は婆利釆女(はりさいじょ)といって、祇園精舎の守護神である牛頭天王の后であり、方位の吉凶を司る八将神の母でもあった。牛頭天王御霊信仰と習合し、現在では八坂神社の祇園様となっている。

もともと日本に伝えられてきた年神信仰が陰陽道歳徳神と合体し、さらにこれに祖先の霊が加わって、年神の性格が出来上がってきたと考えられる。

白川先生の言だそうです。日本語の語源としてこれ以上の権威はないですね。
 
さてでは、節分の方に検索を戻ってみましょう。
http://gogen-allguide.com/se/setsubun.html

また、節分に巻き寿司を食べる風習は、福を巻き込むという意味と、縁を切らないという意味が込められ、恵方(えほう)に向かって巻き寿司を丸かぶりするようになった。
節分に巻き寿司を食べる風習は、主に関西地方で行われていたものだが、大阪海苔問屋協同組合が道頓堀で行った「巻き寿司のまるかぶり」の行事をマスコミが取り上げ、それを見た全国の食品メーカーが便乗し全国へ広まっていった。

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実はここだけではなく、恵方巻きを食べるという風習は「海苔屋」の陰謀である、という書き込みがあるサイトが多数目に付いているのです。
http://babu.com/~hamadayori/9802/setubun.htm

「節分」読ませていただきました。
ちなみに・・某さんの飲み屋での話によると・・
節分の「巻き寿司」の話は寿司屋の悪巧みというより
「海苔や」業界だそうです。
某さん曰く、「寿司屋だったら、にぎりでもいいけど、
巻き寿司だけとなると、海苔やだろ〜」と
自信満々に話して下さいました。
飲み屋での情報なので・・真意の程は??・・。

⇒ 私もその後 某寿司屋のおかみさんに聞いてみたら, やはり
 「あれは 海苔屋の陰謀よ」と言っていました。
 「明石あたりでも ずっと前には節分に巻寿司を食べるなんて
  習慣はなかった。 一般化したのは 20〜30年前ぐらいかな〜」と。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Hinoki/2134/Z_SETSUBUN.html
個人のサイトですが、もっともらしい書き込みがあります。
 
雑誌にも掲載されたとのことですが・・・まあこの記事も信憑性はいまいちでやはり真相は藪の中、なのですかね。

 
ただふと思いついてあるサイトを探し当てました。
http://www.j-nori.com/yomoyama4.html
海苔産業情報センター という海苔屋さんサイドのサイトです。

風習としては、「江戸時代に大阪、和歌山、滋賀あたりで見られた風習である」と大阪の乾物問屋で聞いたことがある。
しかし、定かではないが、ただ、それを海苔の販売促進のため消費者に広く伝えようとしたのは、昭和28年頃の大阪海苔問屋協同組合といわれている。

予想では昭和50年台からの風習かと思っていたのですが、それより前に一度ブームを起こそうとしていたのですね。
それが大阪の一部で広まり、さらに時代が下って目を付けたコンビニ業界が全国に広めた、というのが正解のようです。

ただし、ここでも少し触れられているように、宗教儀式としては全く根拠がないわけではなく、「恵方」という概念そのものは昔から民間の中にあったようで、バレンタインデーに比べると、日本人には合っている風習なのではないかな、と個人的には思ったりします。無言で同じ方角を向いて巻寿司を食べるという絵面はあまり若者向きではありませんが・・・。
 
実は私も子供のころ、さかのぼること15年ほど前にこの風習を知ったのです。我が家にこれを取り入れたのは母でした。ある年の節分の日にいきなり太巻きを買ってきて、「今年はこっちの方角に向いて食べるんよ」と言い出したのを覚えています。
母「なんでも関西の方で昔からやっとったらしいわ」
関西弁でそんなこと言われても説得力ないです。(ちなみに兵庫県)
 
でもこういう風習ってなんだか家庭的で、ほんわかしてて、節分という季節の変わり目を楽しむにはいい儀式だと思いません?
ちなみに今年2005年は西南西です。歳徳神は容姿端麗で慈悲深い女神なのでその姿を想像しながら食べてください。ご利益があるかもしれません。